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平河町のオフィスビル

2017〜2023

地形を掴むヴォリュームの構成

 麹町から永田町にかけてはその間を底部とした緩やかな谷地で、敷地はその谷を縦断する貝坂の途中に位置している。一本筋違いのプリンス通りには大規模なオフィスビル、ホテル、大学などが並んでいるが、敷地の面する貝坂通りではいわゆる雑居ビルが立ち並ぶような比較的小さな街区割で道路の幅員も狭い。

 坂下の隣地は小さな角地で道路斜線から将来的にも高い建物が建たないことが分かる。計画敷地は間口が狭く奥行きが長い形状だったので、この建築が向く方向を道路側ではなく、高層部分で隣地を越えて南側の谷底を望むI型のヴォリューム配置を考えた。一方、低層部で同様の形態だと隣地の建物に視線を遮られ、対面のマンションとの距離も近づくので、ヴォリュームをL型に曲げ道路面から距離を取ることとした。以上のヴォリュームの形態は傾斜地において天空率を最適化する操作とも重なっている。

 また以前は計画地にRC造の建築物があり、現場造成杭の撤去がままならず地中に残置されている。既存杭と干渉しないよう新築の杭位置を計画するため、1階の一部の柱を斜め柱で計画し、階高を6mとした。高層部(5~9F)のヴォリュームは低層部(1~4F)から前面道路側に大きく跳ね出しているため、高層部の柱を斜め柱で構成し跳ね出したヴォリュームを吊り上げる形式とした。斜め柱によって高い剛性を有する高層部と柱梁断面が大きく斜め柱も有することで剛性の高い1階に挟まれたL型低層部の2~4Fは相対的に柔らかい架構となるので、制振ダンパーを集中配置して効率よく建物全体の揺れを吸収する構造計画とした。

事業主:トゥループロパティマネジメント株式会社

構造設計:金箱構造設計事務所

​施工:ナカノフドー建設

​敷地 : 東京都千代田区

用途:事務所

敷地面積:約155m2

建築面積:約105m2

延床面積:約790m2

規模:地上9階建て

構造:鉄骨造、一部RC造

撮影:中山保寛

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